どこの大学へ行くかという問題は一生を左右するほどの重要な決断です。最終的に進学先が決まるまでに感じるプレッシャーは並大抵のものではありません。そのためか、若い人々は往々にして特定のキャリアに直結した専攻を選び、好条件で就職できることをひたすら夢見ながら大学生活を送ります。残念ながら、現代のように経済状況が次から次へと変化する時代にあっては、今年人気の仕事でもわずか数年先には衰退してしまうというケースが十分有り得ます。一方で、より慎重に策を練る学生達は、自分が生涯のうちに数種類の職業を経験することになるだろう、と冷静な判断を下しています。彼らが取る戦略とは、そうした幅の広さに対応できるような大学教育を選ぶことなのです。
これからの数十年間は、大学院でも、企業でも、一層国際化が加速する世界経済の変化に柔軟に適応できるだけの教育を受けた人材を求める傾向が強まるであろう。専門家の見解はこの点で共通しています。批判的に物事を考え、分析することができる。効果的に組織作りを行い、意思伝達をはかることができる。頭脳明晰で新見解を積極的に受容できる。異文化の価値を認められる。確固とした倫理に裏打ちされた高い道徳心を備えている。時代が待ち望むのは、こうした条件を満たす優秀な人材です。すなわち、企業の人事部門の求める人物像というのは、研究者・問題解決者・チームプレイヤー・リーダーになるための訓練を受けたリベラルアーツの大学出身者に象徴される「才能ある万能選手」のイメージに最も近いと結論することができます。
理科系、文科系の様々なコースを履修しなければならないリベラルアーツの学生は、刺激に満ちた意見をたたかわせることで絶えず自らの思考や能力の限界に挑戦しています。同級生との交流はもちろんのこと、指導教授との出会いを通じて受ける様々な影響も彼らの思想・価値観の形成に大きな役割を果たします。学生は、自分自身が何者なのか、そして絶え間なく変わりつづける混沌とした現代の世界において自分はどのような位置を占めるのかといった問題に各自取り組み、納得行くまで答を探し続ける自由を与えられます。こうした学生の自己探求の旅を支援するのは、豊かな指導経験を備えた熱心な教授陣に限るという点にぜひご注目ください。一部の大規模大学で行なわれているような大学院生ティーチングアシスタントによる講義は、こうしたリベラルアーツ教育とは全く無縁です。
リベラルアーツカレッジ・大学へ進む価値は、教育水準の高さ、そして個々の学生に与えられる配慮の細やかさにあると言って差し支えありません。教授一人あたりが受け持つ学生の数、および1クラスあたりの人数はいずれもかなり少なめです。授業を担当する教授は、授業で扱った理論を単なる机上の空論として終わらせることなく、インターンシップや自主研究へと確実に応用できるよう、着実に学生を導きます。リベラルアーツカレッジへの入学を果たした学生は、在学中に大教室での一斉講義を経験することはまず無いでしょう。教授は学生の一人一人の顔と名前を覚えるのみならず、各人が内に秘めた能力まできちんと把握するよう努めます。あたたかな励ましに満ちた環境で学びながら、学生は素晴らしい教育歴、そして卒業と同時に堂々と次のステップを踏み出すことのできるだけの自信を築き上げていくのです。
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